日頃、なにげなく口にしている「ビール」。
ビールは麦芽などを原料として発酵させてつくっている、というのはご存じの方が多いかと思います。
でも、その発酵方法についてはあまり知られていないのではないでしょうか。
今回はそれを解説してみたいと思います。
ビール酵母について
酵母とは?
酵母というのは、糖分をアルコールと炭酸ガスに分解する微生物のことです。
糖分を酵母の働きでアルコールと炭酸に分解してお酒をつくることを、「醸造」といいます。
酵母にもさまざまな種類があり、それぞれの原材料に適したものが使われます。
たとえば、ビールには「ビール酵母」、ワインには「ワイン酵母」など。
また、「ビール酵母」「ワイン酵母」などのカテゴリー中にも多くの酵母があり、その違いが製品の特徴のひとつとなります。
アルコールの醸造だけではなく、発酵させてつくる食品にも酵母は使われます。
特に代表的なものは、パン。
酵母菌がつくり出す炭酸ガスによって、ふっくらとふくらんだパンになります。
そのほかにも味噌や醤油など、さまざまな食品に酵母が使われています。
ビールに使用される酵母
それでは、ビールに使われている酵母とは、いったいどのようなものなのでしょうか。
ビールの醸造に使用される酵母は、大きく3種類に分けられます。
- 上面発酵酵母
- 下面発酵酵母
- 野生酵母
これらの酵母でつくられたビールは、それぞれ違った特徴を持っています。
発酵が進むと液面に浮かんでくる酵母を「上面発酵酵母」と呼びます。
発酵温度が20度前後と高いため発酵の進み方が早く、約3~5日で発酵が完了。
その後2週間程度熟成させてつくられます。
こうして作られたビールが「エール」。
イギリスを代表するビールもこの「エール」です。
また、近年増えてきた「クラフトビール」と呼ばれるビールは、「エール」が多く作られています。
上面発酵酵母は香り成分を豊富につくるのが特徴なため、エール系ビールは香り高く深い味わいをもつのが特徴。
歴史的にも古く、伝統的なビールはすべて「エール」になっています。
現在では、世界各国でさまざまな種類の「エール」がつくられています。
「エール」についてくわしく知りたい方はこちらの記事まで。
発酵が進むと団子状に固まって底に沈んでいく酵母を「下面発酵酵母」と呼びます。
10度前後の低い温度で発酵が始まり、発酵が完了するまで7~10日程度。
その後約1か月ほどの熟成期間を経て完成します。
こうして作られたビールが「ラガー」。
ドイツやチェコで発展したこの「ラガー」は、端麗ですっきりとした味わいが特徴。
歴史的には「エール」よりもかなり浅く、15世紀ごろにこの製法が発見されたという記録があります。
「ラガー」は低温で発酵が行われるため、雑菌が繁殖しにくく製造管理がしやすい、という特徴を持ちます。
そのため、大量生産に向いているのは「エール」よりも「ラガー」。
そういう理由から、日本の大手メーカーでつくられるもののほとんどが「ラガー」ビールとなっています。
「ラガー」についてくわしく知りたい方はこちらの記事まで。
最後に「野生酵母」です。
上記2つの酵母がビールに特化された酵母であることに対して、野生酵母はその名の通り自然界に生息する酵母です。
野生酵母を取り入れて自然発酵させるビールは醸造が難しく、大量にはつくられていません。
ベルギーの「ランビック」に代表されるそのビールは際立った特徴を持つものが多く、好き嫌いがはっきり分かれるビールでもあります。
違いを楽しむ
「エール」や「ラガー」は手に入れることも難しくありませんし、またそのカテゴリー内でも色や香り、味わいなど様々なビールがあります。
そんな中でも、発酵方法の違いでビールを選んでみたりするのもまたオツなもの。
身構えず、気軽に楽しんでみてください。
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