「麦芽100%!本格的なビール」
こういったたぐいのキャッチコピー。
よく見かけます。
ビールは麦芽とホップで作られる、というのはよく知られたこと。
しかし、副原料(麦芽以外の原料)が入っているものも、日本国内ではビールの扱いとなります。
実際のところ、どうなのでしょう?
麦芽100%でないと、本格的なビールじゃないのでしょうか?
結論から言うと、「麦芽100%以外も本格的なビール」です。
このあたりをくわしく解説していきます。
ビールについて考える
日本の法律上の扱い
まずは法律から見てみます。
日本では、ビールの定義は下記のとおりです。
【ビールと発泡酒の違い】(びーるとはっぽうしゅのちがい)
我が国の酒税法では、使用原料と麦芽の使用割合により、ビールと発泡酒を区分しております。
イ ビール
ビールは、
A 麦芽、ホップ及び水を原料として発酵させたもの(麦芽の使用割合100%)及び
B 麦芽、ホップ、水及び麦、米や果実、コリアンダーなどの香味料等の特定の副原料を使用して発酵させたもので、麦芽の使用割合が50%以上のもの
をいいます。
ロ 発泡酒
発泡酒は、麦芽又は麦を原料の一部とした発泡性のある酒類で、具体的には、
A 麦芽の使用割合が50%未満のもの、
B ビールの製造に認められない原料を使用したもの、
C 麦芽を使用せず麦を原料の一部としたもの
が該当します。
なお、発泡酒については麦芽の使用割合により税率が3分類に区分されています。
簡単にいえば、麦芽が50%かつ特定の副原料のみが使われていれば「ビール」と名乗っても問題ない、ということです。
海外ではどうなのか
海外でビールと言えば、「ドイツ」がまず思い浮かびます。
ドイツには、かつて「ビール純粋令」という法律があり
「ビールは、麦芽・ホップ・水・酵母のみを原料とする」
と定められていました。
なんとこの法律は、1516年に制定。
現在では、法改正によってそれ以外の原料の使用も認められています。
しかし、ドイツの醸造所のほとんどがまだこの「ビール純粋令」を守っているようです。
「そうでないとおいしいビールは作れない」と。
質実剛健なドイツの国民性が出ていますよね。
ドイツ以外の国では、ビールに関して厳格な法律は見つけられませんでした。
日本の法律上「ビール」と名乗れないものもビールとして売られている国もありますので、そう考えるとドイツより法のしばりはゆるいのでは、と考えられます。
色々と議論されている
さて、ここで「麦芽100%」の話に戻します。
以前より、あちらこちらで「麦芽100%議論」がなされています。
某グルメ漫画では
「ドライビールはまがいもの」
と某ビールをこき下ろしたり、
有識者を気取る方が
「麦芽100%こそ本物のビール」
「麦芽100%以外はビールじゃない」
などと言っていたり、
こちらは「麦芽100%至上主義」の意見。
はたまた
「麦芽100%は濃すぎて苦い」
「のどごしの爽快感がない」
など、居酒屋で聞かされるような「麦芽100%だとだめ主義」の意見。
すこしズレたところでは、
「麦芽100%だろうが何だろうが、大手メーカーのビールはビールじゃない!」
という、意識が高いお方のありがたいご意見などもあります。
皆さん、ビールが好きなのか嫌いなのかよくわかりません。
ビールより議論が好きなのでしょうか。
ここで少し個人的な見解を。
私は、麦芽100%のビールもそうではないビールも飲みます。
大手メーカーの商品や国内外の地ビール・クラフトビールなども好きですし、ベルギーのフルーツビールなんかも全く抵抗がありません。
おいしいものは何でもおいしい。たとえ原料が何であっても。
だいたい、原料があーだこーだとか細かいことを考えながら飲むビールがおいしいんですかね?
お酒なんて、なんも考えずに飲むからおいしいのではないのでしょうか。
…。
少し調子にのってしまいました。
日本でビールと認められていても、ドイツではだめ。
ベルギーでビールと認められていても、日本ではだめ。
麦芽100%がビールかどうかについても、各国の法律で違います。
副原料にしても、麦芽だけでは表現できない味を出すために各メーカーが研究した結果入れているのであって、なんとなく適当に放り込んでいるメーカーなんて無いでしょう。
個人的には、原料どうのこうのでビールかそうでないかを論じるのは、ナンセンスだと思っています。
麦芽100%以外も当然ビールです
では、なぜここまで「麦芽100%」がもてはやされるようになったのでしょうか。
麦芽100%を「本物のビールだ」という意見は、ドイツの「ビール純粋令」に大きく影響をうけています。
また、メーカーの広告戦略として「麦芽100%というのは、売り文句として使いやすい」という側面も否定できません。
「麦芽100%=おいしい、高級、ぜいたく」
というイメージが先行して、麦芽100%以外がビールかどうかという議論に行きついたのでしょう。
こうなると、本質を見失った議論になりがちです。
結論としては、
「現地ラベルにビールと書いてあればそれはビールです」
もっと言うと
「作ったところがビールだと言っていたらそれはビールです」
そういうこと。
ビールは楽しく飲みましょう。
100銘柄以上を常備!専門店でしか買えないクラフトビール 【Beer OWLE】