「ラガー」ビールと聞いて一番最初に思い浮かべるのは「キリンラガー」。
ビールを飲まれる方の多くは、そう言われると思います。
でも、「キリン一番搾り」も「アサヒスーパードライ」も「ラガー」ビールなんです。
いったい何を言ってるんだ?と疑問に思われると思いますが、ここのところを今回は掘り下げてみたいと思います。
ラガービール
「ラガー」とは何ぞや
そもそも、「ラガー」ビールとは一体何なんでしょうか?
「ラガー」というのはビールの固有名詞ではなく、「下面発酵酵母」を使用してつくられたビールの総称になります。
「ラガー」に対して「上面発酵酵母」を使用したものは「エール」。
これ以外に、野生酵母を使用したビールもあります。
「ラガー」は主にドイツやチェコで発展し、世界中に広まりました。
現在、日本の大手ビールメーカーでつくられているものの多くが「ラガー」ビールになっています。
詳しくは「酵母がないとビールはできません!」という記事に書いていますので、よければご参照ください。
様々な種類がある
「エール」「ラガー」「野生酵母」それぞれのビールは世界各国で様々な種類がつくられています。
このビールの種類を「ビアスタイル」というのですが、その種類は実に140種類以上あるとも。
さすがに細かすぎるので、ここでは「ラガー」の代表的なビアスタイルをいくつかあげていこうと思います。
1842年、チェコのピルゼンでドイツのラガービールをもとにつくられ生まれたのが「ピルスナー」。
淡色ですっきりした味わいのこのビールがやがて世界中を席巻し、現在では世界で一番飲まれているビールとなっています。
日本の大手メーカーがつくっているもののほとんどが、この「ピルスナー」タイプのビール。
「ビール」といわれてまず頭に浮かぶのがこのタイプのビールかと思います。
チェコで生まれたこのビールがのちにドイツに逆輸入され、より色味が薄くすっきりしたものが開発されました。
チェコのピルスナーを「ボヘミアン・ピルスナー」、ドイツのピルスナーを「ジャーマン・ピルスナー」と呼び、日本の大手メーカーは「ジャーマン・ピルスナー」を手本にしているものが多いです。
ドイツでは褐色や色の濃いビールを「ドゥンケル」と呼びます。
その中でもバイエルン地方ミュンヘン発祥のビールが「ミュンヘナードゥンケル」。
「ドゥンケル」はドイツビールの元祖と考えられています。
この地方の醸造者をチェコに招いてつくられたのが「ピルスナー」なのですが、つくられるビールの特徴は違います。
カラメル麦芽を使用してつくられた「ミュンヘナードゥンケル」は色がブラウンで濃く、濃厚な味わいとなっています。
「ドゥンケル」も一般的に黒ビールとされることが多いのですが、ドイツ語で「黒」という意味の「シュヴァルツ」はさらに真っ黒けのビールです。
ローストされた麦芽を使用した「シュヴァルツ」ですが、その印象的な黒い見た目ほど濃厚ではなく、香ばしさの中に爽快さも兼ね備えた飲みやすい味わいです。
ドイツ最大のビール生産をほこる都市「ドルトムント」のラガービールが「ドルトムンダー」。
ドイツ全土のビール生産量の4分の1がこのドルトムントでつくられています。
そんな「ドルトムンダー」は、色合いは日本のビールより少し濃いめの黄金色。
その美しい色合いから「ブロンドビール」といわれるほどです。
香りや苦みは抑えられて口当たりはスッキリしていますが、味わいはコクがあり濃厚。
日本のビールになじみがあればおいしく感じられる味わいになっています。
ドイツ発祥の「ボック」はその濃厚さが特徴のビール。
麦芽の使用料が多く、熟成期間も長めに取られています。
そのおかげか栄養価も高く、味わいは麦の香りが濃厚でアルコール度数もほかのビールより高め。
爽快さを求めるビールではないので、寒い時期に飲まれています。
そのアルコール度数が高い「ボック」を凍らせて、その氷を取り除いて水分量を減らしアルコール度数を高める、という手法でつくられる「アイスボック」というビールもあります。
まだまだこれだけじゃない!
ここにあげた「ラガー」のビアスタイルはごく一部。
他にもまだまだたくさん種類があります。
日ごろよく目にする「ラガー」ビールだけではなく、知らない「ラガー」にチャレンジしてみるのもまた楽しいと思います。
「エール」については、「「エール」ビールは個性的で種類がたくさん!」という記事で取り上げていますので、こちらも参照にしてみてくださいね。