現在、全国に約1,600の酒蔵と5万種類ほどの銘柄がある、と言われる「日本酒」。
これだけある日本酒の中からどうやって好みのものを探しあてるのか、楽しくも悩ましい問題であります。
このようなやっかいな悩みを解決する目安として、4種類のタイプが考案されました。
今回はその4種類のタイプについて掘り下げてみたいと思います。
日本酒の4種類のタイプ
日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)では、日本酒をわかりやすく
「薫酒(くんしゅ)」
「爽酒(そうしゅ)」
「醇酒(じゅんしゅ)」
「熟酒(じゅくしゅ)」
という4つのタイプに分けています。
薫酒(くんしゅ)
「薫酒」は、華やかな香りとさっぱりした軽快な味わいが特徴。
大吟醸酒や吟醸酒に代表されます。
色は透明。
花や果実、かんきつ類やハーブなどの透明感のある強い香りを持ち、味わいはさらっと澄んで切れ味が良くフルーティ。
半面、米独特のコクや余韻はあまり感じず、非常に飲みやすいタイプになります。
10℃前後で飲むと、香りや爽快さが際立つのでおすすめです。
華やかな香りなので食前酒向け。
食中酒として飲む場合は、魚介類の繊細で素材を生かした料理や、ハーブやかんきつ類を使った料理によく合います。
爽酒(そうしゅ)
「爽酒」は、控えめでフレッシュな香りと清涼感のある味わいを持ちます。
本醸造酒や普通酒、生酒や一部の吟醸酒、低アルコール酒の多くがこのタイプ。
日本酒の中で一番多いタイプです。
こちらも透明度が高く、レモンやライムなどの軽めな香り。
酸味や苦みも少なく軽快で、一年中カジュアルに楽しめる味わいです。
5℃前後にキンキンに冷やして飲めばフレッシュさを味わえますし、熱燗にして楽しむことが出来るものもあります。
合わせられる料理の幅も広く、あっさりとした蒸し物や、だしのきいた料理と特に相性が良いです。
醇酒(じゅんしゅ)
「醇酒」は、ふくよかな香りとほどよいコクが感じられる味わいとなります。
純米酒、特に山廃や生酛造りのものに特徴がよく表れます。
淡い黄色に色づいた「醇酒」は、米由来の落ち着いた香り。
ミネラルや米由来の旨味を存分に感じられる、一番日本酒らしい風味です。
飲用温度も、常温から燗酒まで幅広く対応。
温度の違いでさまざまな味の変化も楽しめます。
「醇酒」は、4タイプのなかで最も料理との相性が多彩。
バターなどの乳製品とも相性が良く、旨味の強い食材や香ばしく焼かれた肉系の料理ともよく調和します。
熟酒(じゅくしゅ)
「熟酒」は、香りが複雑かつ豊かで、重厚な味わいです。
古酒や熟成酒など、長期熟成された日本酒が該当します。
とろみがあり黄金色に輝く「熟酒」はスパイスやキノコなどの熟れた香りを持ち、旨味と甘味が豊潤でどっしりとした味わいをかもしだします。
常温で飲むとその香りと濃厚さが引き立ちます。
クセが強いため、「ちょっと飲みにくいな」と思ったら少し冷やしてみるのも〇。
高価で希少性が高いものが多く、日本酒の奥深さが感じられます。
個性がはっきりしているので、料理を選ぶ傾向がある「熟酒」。
スパイスの効いた料理や脂の多い料理、ジビエなど、ほかのお酒で対応が難しいものとの相性は抜群。
その芳醇な味わいは食後酒としても向きます。
参考画像:日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)ホームページより引用
ホームページにチャートがありました。
これを見ればどのような感じかわかりやすいかと思います。
ラベルを見てわかること
4つの日本酒のタイプですが、ラベルに書いてあるわけではありません。
ですが、ラベルからある程度読み取ることが出来ます。
市販されている日本酒には、ラベルに必ず「原材料」の記載があります。
そこで「米・米麹」以外のものが入っている場合、「醇酒」のカテゴリーには入るものは少ないです。
日本酒には「特定名称酒」という分類があります。
ここで、
「大吟醸」と書かれていれば「薫酒」
「吟醸」と書かれていれば「薫酒」か「爽酒」
「本醸造」ならば「爽酒」
「純米酒」ならば「醇酒」
と、ある程度あたりをつけることは可能です。
「特定名称酒」については、「【吟醸】日本酒入門!知っておいた方がいい8種類【純米】」という記事にもありますので参考にしてみてください。
「4種類のタイプ」とは少し違いますが、ラベルに「日本酒度」「酸度」「アミノ酸度」が書かれていればこのように見ることが出来ます。
日本酒度
マイナスであれば甘口、プラスであれば辛口。
日本酒度は、水に対する日本酒の比重で測られます。
日本酒の糖分が多いと、比重が水より重いので「マイナス」で甘口。
少ないと「プラス」になり、辛口になります。
というくらいの感じで覚えておけばいいです
酸度
だいたい1.5を中心として、多いと辛口、少ないと甘口。
アミノ酸度
少ないとあっさり、多いとコクのあるお酒になります。
多すぎると雑味になる場合も。
「日本酒度」「酸度」の組み合わせで、日本酒の味わいがだいたい読み取れます。
「日本酒度」がプラスで「酸度」が低いなら「端麗辛口」、
「日本酒度」がマイナスで「酸度」が高いなら「濃厚甘口」。
これらすべてを組み合わせて、「爽酒」で「端麗辛口」のものなどと見ることが出来ます。
日本酒の奥深さ
今まで書いてきましたが、あくまでもタイプは「選ぶ目安」にしかなりません。
「日本酒度」「酸度」「アミノ酸度」も、しかりです。
「薫酒」と「爽酒」のちょうど中間の味、とか、日本酒度がすごくマイナスなのに甘く感じないもの、とかが普通にゴロゴロあります。
日本酒の味わいというのは、さまざまな要素が絡み合ってバランスよく成り立っています。
ですので、数値やタイプだけできれいに分けることは不可能です。
タイプや数字に惑わされずに、あくまで「目安」として使ってもらえればと思います。