ビールの原材料はおもに「麦芽」「水」「ホップ」。
ビールのラベルにも記載がありますので、ご存じの方は多いかと思います。
では「ホップ」とはいったいどういうものなのでしょうか?
聞いたことはあるけどよく知らない、という方が大半なのでは。
今回はその「ホップ」について、少し掘り下げてみたいと思います。
ホップについて
ホップとは
「ホップ」とはアサ科の多年草で、つるを巻き付けながら7~12メートルくらいの高さまで成長する、雌雄異株の「つる性」植物。
この植物の「毬花」が、ビールの原料となる「ホップ」になります。
「毬花」というのは受粉しなかった雌花の集合体で、緑色の松かさみたいな見た目ですが硬くはありません。
この「毬花」の中にある「ルプリン」という黄色の粉末に、ビールづくりに欠かせない成分が含まれています。
「毬花」は受粉してしまうとビールづくりに必要な成分をつくり出せないため、花粉を出す雄花はやっかい者扱いされすべて畑から除去されてしまいます。
ビールにもたらす効果
ホップがビールにもたらす役割は主に次の4つになります。
- 苦みを与える
- 香りを与える
- 泡もちをよくする
- 殺菌作用
製造の初期段階で麦汁(ビールのもとになる麦芽の汁)に入れて煮沸することで、ビール独特の苦みが与えられます。
これはホップのもつ「アルファ酸(水に溶けない)」に熱を加えることで、水溶性の「イソアルファ酸」に変化して苦み成分となったもの。
この「苦み」を出すために入れるホップを「ビタリングホップ」と呼びます。
ビールの香りは、「酵母」「麦芽」「ホップ」がそれぞれつくり出す香りの組み合わせからできています。
その中で「ホップ」の役割は、ビールに爽やかな香りを与えること。
特に「香り」をつけるのが得意なホップを「アロマホップ」と呼びます。
アロマホップの香りは熱によって蒸発してしまうので、煮沸が終わる際に投入されることが多いです。
ビール最大の特徴ともいえるのが、その「泡」。
他のアルコール飲料で、ここまで泡が消えないものはありません。
これも「ホップ」の効果。
ホップの苦み成分が麦芽のタンパク質と結合することで、ビールの泡はすぐに消えずに保持されます。
一般的に言われているのが、苦みが強いビールほど泡もちがよいということ。
なので、ホップが大量に入っているビールほど泡が長持ちします。
ホップをビールに入れる一番の要因となったのが、この「殺菌効果」です。
殺菌技術が発達する以前に、ビールを長距離輸送するさいに腐らせないよう殺菌効果のあるホップを大量に入れた、というのが始まりと言われています。
ホップの抗菌作用はとても強く、ホップの表面を顕微鏡で見ても雑菌は全くついていないというほどです。
ホップの種類は
ビールに使われるホップは、生のまま「フレッシュホップ」、乾燥させて保存がきくようにしたもの「乾燥ホップ」、粉末にしてタブレット状に固めたもの「ペレット」があります。
摘みたての「フレッシュホップ」を使用するには、収穫時期であることやホップ産地の近くであることなど、条件がなかなかきびしいです(冷凍保存して使用する場合もありますが)。
多くの醸造所では、品質や保管の管理がしやすい「ペレット」を使用しています。
ホップは主に冷涼で乾燥した土地で栽培され、その品種は200種類前後あるといわれています。
有名なのはドイツの「ハラタウ」、チェコの「ザーツ」、アメリカの「カスケード」「シトラ」、日本産では「ソラチエース」など。
それらのホップは、単品種で使用されたり、数種類ブレンドして使用されたりと、醸造所やビールの特徴によって使い分けられています。
ビール以外でも
「ビールのために生まれてきた植物」と言われるほど、ビール以外にほとんど用途の無い「ホップ」。
そんな「ホップ」ですが、ハーブとして薬やお茶などにも利用されたりしています。
鎮静作用や不眠の解消、食欲増進や女性ホルモンを補う作用があるとか。
花粉症予防にも効果があるそうです。
また、ホップの若芽はフランスやベルギーでは高級食材として重宝されています。
ビール普及の立役者
ビールの普及や品質向上に非常に重要な役割をはたした「ホップ」。
「ホップ」が無ければ、世界中でビールを気軽に飲むことはできなかったかもしれません。
その「苦み」には大きな意味がある、ということですね。